「書く技術・伝える技術」 感想 1
倉島保美氏の著作「書く技術・伝える技術」についてとなります。
この本は一言でいうとビジネスライティング、つまりビジネス文書の技術や知識についてが書かれています。
ビジネス文書とはビジネスの世界で読み書きされる全ての文章を指します。例えば報告書、議事録、マニュアル、論文、ビジネスレターなどがそうですね。こういったビジネス文書での読み手に負担がかからない書き方などをこの本では教えてくれます。
また、この本での文章そのものが読み手に負担をかけない書き方をされています。なので初心者でもとてもわかりやすく書かれています。僕もビジネスライティングの本は初めて読みましたがとても理解しやすかったです。
この書籍では基礎編、理論編、実践編といった3つの章で構成されています。今回は基礎編について投稿していきます。
基礎編{「書く技術」が身につけば、仕事の効率はもっと上がる!}
まずは読ませない文章を書くことです。ビジネス文章では読み手に負担をかけない伝達性、読み手を説得するための論理性、素早く文章が書けるといった作業性などが求められます。
その中でも特に伝達性といったものが強く求められます。そもそもビジネス文章はその文章を読みたいから読むのではなく、その文章に書いてある情報が必要なので仕方なく読まれます。
なので読み手が情報入手のために仕方なく読む以上は、書き手は読み手になるべく負担がかからないように書かなければならないのです。
読み手に負担がかからないように書くために3つほど重要なことがあります。
まず第一に読み手になるべく文章を読ませず、且つ必要な情報を伝達することです。文章のなかには必要な情報と不要な情報とが混在しています。なのでビジネス文章では不要な情報を読ませない技術が必要となります。
第二に内容を一読で理解してもらえることです。忙しい読み手の場合、文章を一回サッと読んだだけですぐに作業に取り掛かります。文章を読みたいのではなく、文章に書かれている情報を使った作業をしたいからです。
なので文章をゆっくり熟読したり、繰り返し読んでくれたりはしません。この場合、わかりにくい部分は理解できずままに作業に取り掛かることもあります。したがって、異読でも誤解されないように書く技術が必要です。
最後に重要な情報を記憶してもらえることです。先ほど述べた通り、忙しい読み手は短時間で多くの文章、情報を処理します。その情報について記憶しておけばいい情報か、自ら作業すべき情報か、そうならばどのように作業すべきか、どのような優先順位で行うかを判断していきます。
ですが、その情報処理に時間がかかってしまっては肝心の仕事が山積みになってしまいます。なので、その負担を減らすために重要な情報を記憶できるように書く技術が必要となります。
文章の良し悪しがビジネスの成否を分ける
情報化社会では「書く技術」は強力なビジネスツールとなります。インターネットが普及し膨大な情報が溢れている現在のビジネス現場において、その情報のなかから有効な情報を文章によって効率よく共有化していくことでビジネスの生産性が高まるからです。
効果的なビジネス文章が書ければ読み手と書き手の両方でビジネスの生産性が上がることになります。効果的に書かれたビジネス文書で得られる読み手のメリットを以下に挙げます。
・なるべく読まずに、それでいて必要な情報を入手できる。
・内容を一読で理解できる。
・重要な情報を記憶できる。
次に書き手のメリットを挙げます。
・内容を一読で理解してもらえる。
・重要な情報を印象に残せる。
・論理的に構成できる。
・文章を速く書ける。
この本によると効果的な情報伝達ができないときは書き手側に責任があると述べられています。情報が正確に伝わらずに困るのは書き手だからです。読み手に責任はありません。
読み手が情報を読み落としたり、誤解してしまうのは効果的なビジネス文章が書けていないからです。その場合は、「なぜ読み落とさせてしまったか?」、「なぜ誤解させてしまったか?」という点について、文章を読み返し見直してみましょう。
「書く技術」は経験では身につきません。効果的なビジネス文章を書くには正しいライティングの手法を知らなければなりません。さらに知っているだけでは不十分で実践しなければ書くことはできません。実践とフィードバックによって知識からスキルに昇華されます。
ですが日本ではライティングを軽視する傾向にあるので、効果的なコミュニケーションのための文章作成法を学習機会がほとんどありません。そのため悪文がはびこっているそうです。なのでこの本ではアメリカの進んだ理論を参考にしています。
日本ではまず文書の書き方を学校で教わることがほとんど無いのです。ところがアメリカでは学校教育のなかで効果的なコミュニケーションのための文章作成法を学びます。ほぼすべての大学一年生が講座で最低でも半年間学習します。そうしておかないと後に大学および大学院でレポートや論文が書けないからだそうです。
そうしたアメリカは明らかに日本よりはるかにライティングの理論が進んでいます。なのでこの本でも、「ライティングはアメリカに学べ!」と述べてあります。
文章を構成するには読み手のメンタルモデルに配慮する。まずメンタルモデルとは何かというと、人が自らの頭の中につくる理解の世界です。ある情報が頭に入ってくると人はその情報を自分なりに消化しようとします。そのために「これはこういうことだな」という認識をし、心の中に自分なりの世界をつくります。
人はそのメンタルモデルを作ることで頭に入ってくる情報(入力情報)を高速で処理しようとします。本文中では次のような例が挙げられてました。
例えばある文章の中で「第一の原因は、」とあるのを読めば、人は次の2つのことを予想しながら、なるべく高速に情報を処理しようとします。
・「第一の原因は、」の直後には、原因が説明される
・第一の原因を説明した後に、「第二の原因は」というキーワードとともに第二の原因が説明される。
なるほど。たしかにそうだと納得しました。これがメンタルモデルを用いた情報処理の一例です。
読み手が文章を読みづらいと感じる原因の一つはメンタルモデルが崩れ、情報処理が遅くなっていることが挙げられます。この場合は文章の並べ方や情報の出し方が問題となります。
例えば先ほど述べた「第一の原因は、」の直後に説明が説明されなければ読み手はその文章を理解するのが難しくなります。メンタルモデルが崩されたからです。そして読み手は新たに「これは書き手のミスだろう」、「この後に説明がされるのか?」といったようなメンタルモデルを作ります。メンタルモデルが崩れ修正しなければいけないので、理解しずらくなるのです。
なので、読み手にできるだけ明確なメンタルモデルを作らせ、読み手のメンタルモデルによる予想通りの文章を展開することに配慮すれば読み手の読解速度は跳ね上がるでしょう。
頭のなかでの情報処理
- 頭の中へ情報がインプットされる。
- 「これはこういうことだろう…」といったようなメンタルモデルが作成される。
- メンタルモデルの関連情報が活性化される。
- メンタルモデルによって次の情報を予測する。
- 予測が的中すれば高速処理となる、予測外ならば低速処理となる。
とりあえず基礎編はここまでとなります。個人的には正確に情報伝達ができないのは書き手側の責任という部分とメンタルモデルの話が興味深く、納得もできましたね。
この本では例文と演習問題が豊富なので本当に初心者にもビジネス文書を見直したい方にもおすすめできる一冊だと思います。ただ運が悪かっただけかもしれませんが僕は書店を4~5店舗ほど回っても見つからなかったので、もしかしたら発行部数が少ないのかもしれないのでAmazonなど通販で買ったほうが早いかもしれないですね。
次回は理論編についてとなります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
それでは。